働き方改革が推進され、職場の環境改善に取り組む企業が多くなりましたが、新たな考え方が進んでいます。「バイオフィリア(Biophilia)」という概念です。
バイオフィリアとは、「バイオ=生命・生き物・自然」と「フィリア=愛好・趣味」を合わせた造語です。1984年に、アメリカの生物研究者であるエドワード・O.ウィルソンが提唱したもので、「人は自然とのつながりを求める本能的欲求がある」という概念です。言い換えれば、「人は自然と触れ合うことで、健康や幸せを得られる」という考え方です。このバイオフィリアの概念を、具体的な建築環境に活かしたデザインは、バイオフィリックデザインと呼ばれます。職場に自然を感じられる環境を、建築やインテリアで再現する取り組みで、自然光や植物、水などを配して、グレーやモノトーンではなく、緑や青、黄色を取り入れた色彩を使ったデザイン設計です。
このバイオフィリック・デザインついて、ビジネス心理学を研究するアメリカのロバートソン・クーパー社は、世界16カ国(イギリス、フランス、ドイツ、UAE、中国、インドなど)、7,600名の働く人々を対象にして、職場におけるバイオフィリック・デザインがどのように人々に影響を与えるかを調査しました。その報告書『ヒューマン・スペース』において、職場環境に自然を取り込むことが心理的な面でプラスに働き、業績の向上にもつながるということがわかっています。具体的に効果があるとされているのは、働く人の生産性・創造性・幸福度が上昇することです。生産性は6%、創造性は15%、幸福度は15%アップすると報告されています。つまり、バイオフィリック・デザインを導入した職場は、コミュニケーションが活性化され、人間関係も良好になり、生産性も向上します。こうした好循環に着目した企業が、バイオフィリアの要素である緑を、オフィス環境に取り入れているのです。アップルやアマゾンといった世界的企業で採用され、そのオフィスは、緑で溢れています。バイオフィリアの概念は日本ではまだ広く普及してはいませんが、グリーンレンタルの市場を大きく広げていくことが期待されます。