「あおり運転」が社会的な問題になっています。あおり運転とは「車間距離を詰める」「幅寄せする」「執ようにクラクションを鳴らす」といった行為で、ドライブレコーダーに残された記録をみるまでもなく、悪質なものです。特にスピードが出る高速道路では、大きな事故につながる危険性があり、社会問題になっています。 

 イライラ感を解消する

あおり運転をした人の供述を見ると、相手ドライバーに対する「もっと速く走れ」「邪魔だ」という、怒りや敵意にも似た感情が引き起こす事が多いようです。いわゆる“イライラ感”です。

こうしたイライラ感を鎮めるには、心に余裕をもってハンドルを握ることです。好きな音楽を聴く、適度に水分をとるなど様々な方法がありますが、心に余裕をもたらすといえば、やはり緑でしょう。

当社と産学連携研究でオフィスにおける緑の効果について学会発表した千葉大学園芸学部の岩崎寛教授は、次のような検証を行っています。実際の高速道路のパーキングエリア全体を利用者が緑に接する機会が多いデザインに改良して、利用者の心理状態に与える効果を検証しました。オフィス実験において緑の存在が働く人のストレス軽減に効果があったように、緑の力でドライバーの心理状態が改善すれば安全運転に繋がるはずです。

 検証は千葉県東金道路にある野呂PAにて実施しました。施工前の野呂PAは、全体の両脇に緑地がある一般的な設計です。車を降りた利用者はフードコートや売店に立ち寄り、駐車場に戻ります。移動経路は矢印の通りで、途中に緑地はありません。

それを施工後は、利用者の移動経路に必ず緑地を通るような設計に改良したのです。具体的にはハーブや植栽で、緑と接するスペースを移動経路に作りました。

 

 

上:施工前 下:施工後

 

そして、同じ利用者に施工前と施工後の心理状態を、オフィス実験でも使用したPOMS検査という分析ツールで比較しました。

結果、「怒り、敵意」「混乱」「抑うつ・落ち込み」「疲労」「緊張・不安」のマイナス感情が改善されることがわかりました。つまり、運転前に緑と接することで「イライラ感」が軽減することが期待できるのです。 

 運転前に緑をみよう

国はあおり運転を取り締まる「妨害運転罪」を創設しました。違反1回で免許取消、高い反則金など厳しい処分を課し、撲滅に努めています。

罰則の強化は、あおり運転撲滅の方法の1つでしょう。その一方で、イライラ感・怒り・敵意といったマイナスの感情になるのを未然に防ぐことも必要です。それには運転前には緑を必ず見て、心を整えてからハンドルを握りましょう。

「運転前に緑を見よう!」。警視庁の全国交通安全運動のスローガンとして、使って頂きたいですね。