10月1日、東海道新幹線が60周年を迎えました。日本が世界に誇る高速鉄道で、開業当時の最高時速は210キロ。6時間以上かかっていた東京と大阪を4時間で結びました。東京駅では式典が行われ、始発から世代を超えた多くの鉄道ファンが祝いに集まりました。今回は広告代理店の知り合いに聞いた、新幹線と色の話です。 

 「新幹線は青」という絶対的イメージ

東海道新幹線が年で運んだ乗客はおよそ70億人。「0系」と呼ばれるその特徴である“丸い先頭車両と青のライン”は、日本人に愛されました。

 特に、富士山の麓を猛スピードで駆け抜けていく新幹線の青は、アイボリーの地色とのコントラストの爽快感も相まって、美しく象徴的でした。新幹線=青という、絶対的なイメージが刻み込まれたのです。

もともと青は、日本人の一番好きな色です。WEBで「日本人の好きな色」と検索すると多くの調査サイトがランキングを発表していますが、大体1位は青です。当時も今も、人気は変わらないでしょう。

 そして1982年、東北・上越新幹線が開業します。国鉄から民営化へ、起点が東京駅から上野駅へと移り、注目が集まります。何よりも東海道新幹線との明確な差別化が求められます。そして18年に及ぶ「青」という絶対的なイメージの壁をどう越えていくのか。

こうした問題をすんなりと解決したのが、緑の力です。 

 緑は古い認識を継承しつつ新しい認識を創る色

東北・上越新幹線のイメージカラーは、北国の大地の豊かさ・雪解けの新芽・若葉を象徴した緑色でした。

そしてこの「緑の新幹線」は、懸念された問題を解決し、違和感なくあっさりと日本人に受け入れられたのです。

理由は、緑のもつ柔らかな洗練さ、そして緑は中庸を表し、好き嫌いの拒否反応が最も起こりにくい無難な色だからでしょう。誰もが心なごむ色が緑なのです。現在でも、前述の「好きな色ランキング」でも1位はほとんどないですが、上位には入っています。開業当時運行していた200系は「緑の疾風(みどりのはやて)」の愛称で親しまれました。2013年まで定期運行をし、惜しまれつつ引退しています。

一部では「同じ青でもいいのでは」という意見もあったそうです。しかし、それでは2番煎じで地味な開通という印象は拭えなかったでしょう。いずれにせよ、浸透するには緑に比べ時間がかかったと推測されます。

また、緑は新しいシステムをアピールするためのコマーシャルカラーとしての機能もありました。「西に行く新幹線は青、東に行く新幹線は緑」という、今までの認識を活かした新しい認識を生んだのです。

この新幹線によって認知された、西=青と東=緑という図式は、旧国鉄が分割・民営化されたあとも受継がれ、JR西日本・JR東日本のコーポレートカラーとして採用されています。

新幹線を舞台に青から緑とつないできた物語は、令和の時代となった今も続いています。

 

 

 

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