病院に通う患者は、身体の具合の悪さに加え、これから行われる治療への不安から精神的に緊張感やストレスを感じています。特に歯医者は最もそう感じる人が多いといわれますが、その診療室に緑が置いてあった場合、どれだけ緊張感が緩和されるのでしょうか?
このことを調べた実験データがあります。東京農業大学が行った実験で、実際の歯医者の診療室において、次の3つの状況を設定して行われました。
・観葉植物を置いていない診療室
・観葉植物だけを置いた診療室
・観葉植物と花弁及びハーブ類を置いた診療室
この3つの診療室における、それぞれの人の緊張感の変化を調べたものです。
緊張の変化の度合いを示す指標は、RPP値と呼ばれる数値を使っています。RPP値とは心拍数と最高血圧をかけたもので、一般人のRPP値の標準値は7,200から9,600とされています。医療機関に置いては、このRPP値が12,000以上となった場合は手術は中止するそうです。
実験は、1分間観葉植物をみたあと診療室の椅子に座り、10分間安静にしてRPP値を測定しました。測定の順番は2通り行い、次のような結果がでました。
植物なし→観葉植物のみ→観葉植物と花弁の順番 ⇒ 表2の結果
観葉植物と花弁→観葉植物のみ→植物なしの順番 ⇒ 表3の結果
いずれの順番でも、植物があった方がRPP値が低くなっています。つまり、植物があることで緊張感が緩和されていることが分かりました。理由として次のことが考えられます。
・被験者が入室時に1分間植物や花弁をみていたことによる視覚的効果
・観葉植物と花弁の場合さらに効果が高まったのは、測定中の芳香にいる嗅覚的な効果が加味された
平均最大でRPP値は1,200の差がでています。これは血圧に直すと40下がったことに相当し、個人差があるせよ大きな効果が認められました。
植物があることで、人間は緊張感が緩和されます。緊張感の緩和はストレス軽減につながり、リラックスして仕事に臨むことができるのです。皆様のオフィスにも緑を置いて、よりよい働く環境を作っていきましょう。
引用文献 2008年、東京農業大学・水庭千鶴子氏、阿藤 舞氏、近藤三雄氏が東京農大農学集報にて発表した「緑化が被験者に与える緊張感の変化」から。